イタリアのデザイン教育機関及び授産施設等の視察報告④

199月 - による Author - 0 - CD JACKET GRAPHIC WORKSHOP

□ダンテ・ドネガニ(DAデザイン学部長)との対談

D(ドネガニ氏):ビジネスデザイン、マスターコースはなかなか難しいところです。マスターの教育については、より良い市場コンセプト、アイデアを発展させたプログラムを作成したり、その為の市場調査をしたり、運営が大変です。

このマスターコースの教育で一番の価値は、メイドイン・イタリーのデザインを制作・発信することです。オリベッティー等の企業の新しい思想に基づいて企業に改革の提案をしていったり、企業内のデザイン的部分の運営管理を学生共々していくのです。企業とタイアップして、企業改革をプログラミングし企業と学校が一体になって新しいビジョンを制作、そして新しい運営方式を模索していきます。

ものの制作のみでなく、運営管理のフォーマットを学生自身が作る。これにより、ジョルジュ・アルマーニがそうであったように、デザイナーが起業及び企業家になっていくというビジョンも持つようにする訳です。イタリアには、古き良きものが沢山あります。それを大切にして、新しい物と伝統的なものがタイアップし革命的なものにしていくのがマスターコースの役割かも知れません。地方のガラス、陶芸を交え、新しいものに!

O(おーくん・あきら):それは日本も同じです。日本もイタリアに負けないくらいの伝統に裏打ちされた様々な内容があります。それをコーディネートする教育は大変面白いと思います。

D:イタリアのブランド「アレッシ」(有名企業、昔からナイフ、フォーク、スプーンだけを作ってきた)があり、それを学内で改革する予定です。

O:利益のためだけにやっている感じじゃないですね。

D:デザインによるブランドイメージ力のアップです。

O:日本でもブランドを支えてきた職人が沢山いますが、仕事がなくなってきています。

D:イタリアでも同じく倒産していくブランド企業があります。伝統のものを受け継ぐアイデア、マーケティングを作りかえてあげるプログラミング作りがマスターで手伝えればと思います。イタリアの企業は問題を抱えているところが多いのです。最初に問題のある無しの企業を選別し、コースの優秀な学生を選び、戦略やビジョンをたてていく。

O:これは学内での細かなワークショップ形式の授業と言えますね。

D:そうです。具体的には①問題提起、②ワークショップ・セミナーを定義、③ワークショップに企業が来て、学生を指導する→どういうことをしたいか、問題点、ミッションフォロー、これまで学生がやってきたこと、④マスターの学生を4グループのワークショップに分け、改革等を教授とつめていき、ふたたび問題提起、新しいアイデアのグループワーク、シミュレーションを制作します。

O:興味深いお話です。心配なのは、企業は生き物ですからワークショップの材料としてはうってつけですが、それを対象にして研究教育していくのは忙しく、学校として振り回される可能性はありませんか?それに企業は命がかかっていますから、学校のテンポとのズレもでてくるでしょう。

D:それでも企業の新しいビジョンを追いかけていくのは若干リスクがあっても面白いし、教育効果もあります。

O:同感です。

D:美しく正しいことは一番難しい。

O:日本の大学は今まで閉鎖的だったのでそういうものを作りにくかったんです。

D:大学の研究所は企業の研究をすることで成り立っているのでは無いのですか? 普通のことでは?

O:そこは今まで殆ど欠落していました。デザインはそこを目指しているはずなのですが。企業と研究が繋がっている意識を多くの先生がもっていなかったと言えます。

D:イタリアもある意味同じようなもの。しかし、確実に変わってきました。

O:私は、自分の授業にできるだけワークショップ的要素を取り込むようにしているんですが、それは、極端にいえばデザイン教育は人間教育だと考えているからなんです。

D:それは、将来的にとても必要。ビジネスデザインは人間だけでなくお金もです。これは企業教育だからです。ビジネスとデザインを交差させ、良いものを作る。デザイナーは企業が必要だから、コネクションも必要。ビジネスはデザインとうまくくっつくといい方向へ発展する。アレッシはデザインとくっついていい方向へ発展すると考えたからマスターコースと繋がったのです。デザインがあって、マーケティングがあって、企業の発展になるんです。