おとぼけロード

308月 - による Author - 0 - ESSAY

 

焼きつけによるイラストレーションタイル(1992)

ある日オレは、オフィスの同僚が乗るホンダのトライアルにタンデムして地方へ取材に行った。メキシコからUSAにまで抜けるアメリカンハイウェイが、バニシング・ポイントまで真っすぐに突き抜けて走っている。バイクには最高の道だ。飛ばしたい気になるが、相棒のライダーは慎重なヤツだった。

首都から二十キロも走っただろうか、まだまだ道のりはあるというのに、数百メートル先で、グレーと紺のユニホーム四人が道を塞ぎ手を出して止まるよう指示している。あっ、ヤバイとは思ったが、素直が一番。四人とも、米軍の払い下げとはいえ、まだ充分使えそうなカービン銃を肩から提げている。法定速度だったし、ヘルメットもつけていたし、おかしいなあ…。バイクから降りると突然ひとりの警官が

「マノ・アリーバ(手をあげろ)」

これにはびっくりした。まさか撃ちはしないだろうが、こんな検問で銃を突き付けられるなんて、身体中から一気にかなりの量の汗が吹き出てくるのがわかった。

「どこから来た」

「首都のデグシガルパからだ」

「おっ、このバイクはジャマハだな。まだ新しいじゃないか、高いだろう。何ccだ?」

「おい、もう行ってもいいかい、検問は終わったろう」

「いや、ちょっと待て、罰金50レンピーラ、スピード違反だ」

「ば、罰金だって、ちゃんと法定の速度で走ってたじゃないか」

「いや、ちょっと速かった」

「ちょっと速かったって、あんたたち、何かで正確に測っていたかい。測定器も何もないじゃないか!」

「測らなくたって四人で見てりゃわかる。罰金だ!」

これらはあきらかに言いがかりだ。いくら説明しても、身分証明書を見せても彼(ヤツ)らにはピンとこない。外人であれば疑わしいのである。オフィスへ連絡をとりたくても、草原の真っ只中、どうしようもない。頻繁にクルマが通るわけじゃないし、まして日本人のクルマが通ることなど皆無に等しい。

いいかげん説明するのにも疲れてしまった。一人が罰金をオレたちに請求している間に、他の三人は、同僚のカメラを覗き込んだりバイクに跨いでさわいでいる。

「50レンピーラだって、20レンピーラしか持ってないよ」

面倒臭くなりそう言った。

「じゃ20レンピーラでいいよ」

これだ…。小遣い稼ぎの検問だ。罰金の割引なんて聞いたことがない。金を渡すと、警官は四人ともコロッと態度が変わり、

「この道は事故も多いし、悪い奴もいっぱいいるから気をつけなアミーゴ(友だち)!」

何がアミーゴだバカヤロウ。(1レンピーラは約100円)