女性が「自己」を得ることが、直感と論理が高度に融合した社会を生む

288月 - による Author - 0 - ART WORKS CASHEW ESSAY

 

企画個展ポスター 京都・山総美術(2009年1月1日〜31日)

「学校で学生たちに接していても、女の子の観察眼には、感心するんですよ。たとえば、つまんないことだけど、先生はいつも首を右に80度曲げて歩いているとかね。そういうことばかりじゃなくて、とにかく、彼女たちの視点は斬新なんです。

ぼくの、グラフィック・デザインの仕事にしても、若い女子学生の瑞々しい感性に触発されることが非常に多い。でも、彼女たちは、そういった感性を、生活の瑣末な部分には使うけど、自分自身を見つめることや、社会的なことには使ってない。みんなそれぞれ違う個性を持っているのに、自分を、他人と同じ物差しではかろうとしてる。それが、残念なんです」

さて、では男はどうなってるのか。

彼は、今の若い女と男の精神状態を、色の3原色になぞらえて、説明する。

「ぼくは、自己を確立するために必要なものを、よく色の3原色にたとえるんですよ。赤は、情報をコレクト(収集)するときの情熱。青は、情報をセレクト(取捨選択)する冷静さ。黄色は、手元に残った情報をディレクト(構成)する知性というわけです。

で、今の女の子は、赤(情熱)だけ強くて、いろんなものを、引き寄せるだけ引き寄せるんだけど、何も捨てられないし、ディレクトできない。男は、逆に、青と黄色は女の子よりも、持っているんだけど、そもそも赤(情熱)が欠乏してるから、迫力負けしちゃう」

そして、男の赤(情熱)の不足は、女性に対する態度にも、表れる。

「男は、女の子に期待してないんですよ。かわいいお人形さんであったり、母親代わりという以上のことをね。対等のパートナーとして見てない。男が女の子の感性に対し、人生の瑣末な部分でしか、期待していないことが彼女たちから、自己を奪っているともいえます。

男は、生活の面倒を見て、女を飽きさせなければいいというわけじゃなくて、女性を尊敬する勇気を持たなければならないと思うんです」

「AMOR」…人工漆、金・銅箔、キャンバスボード サムホールサイズ(2008)

「どうすれば女性にモテるか」という質問も不毛だ、と彼はいう。

「男はそろそろ、女にモテたいからウケを狙うという、考えを捨てたほうがいいんじゃないでしょうか。ぼくも、大学の教員になりたてのころは、ウケを狙ってた。若い子向けに話のネタを雑誌で拾ってから、講義に臨んだりもした。でも、最近は、そんなことしなくなりました。そのほうが、学生との信頼関係が深まることが、わかったからなんです。

女の子は、男が思う以上に、うわべだけの態度や言葉に敏感だし、男が全然評価してない男の部分も、ちゃんと評価してたりするんですよ」

もちろん、女性の問題は、そのまま男の問題でもあるのだ。

「女性が自己を持つということは、当然、自己を持たない男はモテなくなる。で、男も、自己を持つようになる。そうすれば、みんな、男らしさとか、女らしさっていうことにとらわれず、自分らしい生き方が、できるようになる。世の中は、個人のオリジナルの夢でいっぱいになるわけですよ。男と女の、真のパートナー・シップが、そのとき初めて生まれるんです」

さらに彼は、もっと広い視野で考えると、と前置きして、こう締めくくった。

「ぼくは、論理先行の男社会ではつまらないし、今の文明がかかえる矛盾も、解決できないと思ってるんです。女性は直感にすぐれている。そして、その女性が自己を持つことが、論理と直感が、高度なレベルで融合した社会につながるはずだ、とも思うんです。

それは、男が自分の中の女性的な部分を認め、女も自分の男性的な部分を認めることで、初めて人間性というものが理解される社会なんです。そうすれば、みんな、本来の自分と、既成の枠組みから押しつけられた、役割との間で分裂しなくてすむ。人間らしく、イコール、自分らしく暮らせる社会なんです」