エンボス版画制作(ワークショップ)

59月 - による mijomijo - 0 - EMBOSS WORKSHOP

 

和紙エンボス版画(1986年)

この表現は、30年近く本人の作品制作と共にデザイン教育、ワークショップのなかに取り込んできた版画表現である。普通エンボス版画(型押し版画/空押し版画)の場合、型となる版は固い金属類に形を刻まなくてはならないため、手作業で制作することが困難なので、製版のみ外注することが多い。これはプレス機による摩耗での版の耐久性を考えた場合であり、制作枚数が数十枚程度の場合もっと簡易な製版でよいと考えた。また外注などによる製版待ちのタイムラグや高い制作費はデザイン教育、ましてや一回ごとに終了するワークショップにはあまり適していないと考えた。そこで、固めの厚ボール紙(当時は馬糞紙と言った)を重ねたり削ったりすることで版を制作し、和紙等の厚めで柔らかい用紙を重ねプレス機を通すことで充分なエンボス表現が出来ることがわかった。

版画家の良心ということがある。版画家はプリントする版画のエディションを決め、何枚するかを決定し、その枚数を制作した後に版の方を壊し絶版にする。これによりエディションという限定内で作られた版画の価値や威厳が保たれることになる。しかし現在その状況は怪しく、絶版されるべき版画のオリジナル版や精巧なコピー版が流れ再刷され市場に堂々と出回ったりしている。厚ボール紙による版は、作家自身に制作の良心がなくてもその耐久能力から、ある程度の枚数を制作すると自然に壊れる。私はこれを「版が自ずから良心を備えている」と言っている。そういう教育的な部分だけでなく、厚段ボールによる製版は小学生から大人、障害者までカッター1本で伸び伸びと表現することが出来る。このエンボス版画制作はその制作だけでも製版、刷りという二段階を持ち合わせているのでダイナミックな講座展開が出来るのであるが、これにもう一要素加える事で制作内容への意味付けが可能になる。それはデザイン的作業であり、コミュニケーションでありワークショップ全体に深い印象を根付かせることになる。

エンボス版画は基本的にポストカードサイズで制作させることが多い。ポストカードサイズにすることは形の同一性や規格というデザイン概念を知ってもらうことと、コミュニケーションツールとしてのポストカードを考えてもらうことになる。制作されたエンボス版画には、必ずエディションナンバー、タイトル、制作年、サイン等を鉛筆で入れてもらう。

これにより版画の複数性、希少性などの感覚を学んでもらう。

ここからが二次展開であるが、複数枚制作したエンボス版画の交換会を行う。これによりお互いの作品への批評精神が生まれたり。他作品からの新しい刺激を受けたりして思いがけない広がりが生まれる。さらに各受講者に事前に一名だけの住所・氏名等を用意しておいてもらい、ワークショップの会場でエンボス版画を葉書仕立てにして、こちらでまとめて郵送する。このことにより、当日で完結するはずのワークショップは、各自の発送したエンボスポストカードの行方と先方の反応等で様々な余韻を残していく。

ワークショップを1日で完結せず、どこまでも良い意味で引きずる方法を試行することが大切である。